Drag Me To Hell

minii2009-11-10


サム・ライミ監督『スペル』を観てきた。

 「スパイダーマンサム・ライミ」監督最新作と思って観ると茫然としてしまうかもしれませんが、「死霊のはらわたサム・ライミ」監督最新作と思って観るとなるほど!ウェルカムバック!な傑作だと思われます。

 演出や美術、音楽など、人に例えるなら「外見」にあたるだろうところはクレジットのフォントまでもが極めて古典的。やはり古典のホラーって美しくて怖いなあとしみじみしているのも束の間、ローナ・レイヴァー演じるガーナッシュ夫人という言っちゃ悪いが不気味な老婆がアリソン・ローマン演じるクリスティーンを襲うのだけど、そのやり方がもうクレイジー!こわい!気持ち悪い!でもバカバカしい!このシーンで老婆に呪いをかけられてから、物語のテンポは緩みません。変態の(褒め言葉です)サム・ライミは手を変え品を変え、観客を怖がらせ、気味悪がらせ、そしてなぜか笑わせます。コメディの要素を入れるのはライミ監督の特徴ですが、これってなんなのでしょうね、私は「照れ隠し」みたいなものだと思っているのだけど。なぜならそれ以外の大部分はクラシカルな良作の風合いだからです。優等生じゃないもん!という監督の宣言がこのコメディ要素であるように私には感じられます。

 アリソン・ローマンといえばティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』での、「可憐」という言葉を擬人化したみたいな可愛い女性のイメージがあったので、最初は「そんなにいじめないでくれ・・」と心が痛かったものの、だんだん壊れちゃって最後はもうヤケクソになってる彼女を見たらもう笑いが止まらなくなったけれど、最後の最後にどんでん返しがあるのはこのテの映画のお約束なわけで・・・

 伏線の内容には少々の無理矢理感があるが、その線の張り方は秀逸で、最後は思わず声をあげてしまいたくなるほどでした。邦題は『スペル』ですが原題は“Drag Me To Hell”、本編が終わると同時にタイトルがバーン!と出てズドン!と腑に落ちます。怖がらせる手法は、段階的なクローズアップや大きな音などの古典的なやり口に、ライミ兄弟の発想力がミックスされて絶妙です。ストーリーも中だるみナシで面白く、ローナ・レイヴァーの怪演は唯一無二で必見です。