もういい加減キレようかなーどうしようかな、と思った。こういうとき頭で考えると悪い方向にしか行かないのは経験的にまあ、間違いない。数年ぶりに煙草を一箱買って、吸ってみた。懐かしい味だ。学生の頃を思い出して、悔しいけれど少し、心が安らいだ。毒をもって毒を制す。って使い方間違ってる?でもそんな感じ。

 だけど毒はやはり毒で、一本吸いきるころには体がみるみる冷えてきた。血が汚れていくのを感じる。薄黒くなった粘度のある血液が、心臓に、脳に流れてゆく様を想像すると吐き気がして、私は慌てて歯磨きをして、オレンジを食べた。

 相変わらず悲しいままだが、泣けてはこなかった。私は何をそんなに恐れてるんだろう。

「憧れ続けていた筈の 孤独と自由が 首を絞める」
 そう歌う彼女の姿を思い出して、髪を切ろうと思った。