Adaptation

アダプテーション DTSエディション [DVD]

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スパイク・ジョーンズ監督『アダプテーション

 多少、いやかなりイライラさせられる作品だったけれども、それはストーリー展開の不器用さに対してではなく、主人公に投影した自分自身への苛立ちであったように思う。
 
 実際の人名が出てくるのでノンフィクションかと思いきや、どうも実在しなそうな人物が現れ、主人公の頭の中の世界がいつのまにかメインの舞台になり、現実と虚構の境界線に関してなんら説明がなされないまま、入れ子構造が開いたり閉じたり。結末も大してまとまらないというか、肩透かしを食らったような気持ちにされて終わってしまうのだ。


 果たして面白かったのかなあ?つまらなくはなかったけど・・・と観終わった後に考える。するとピン!と来る。複雑に見える構造も、実は映画の文法に則ってホンモノとニセモノが見分けられるようになっているから、実は全然複雑な話なんかじゃなかった、ただ脚本家の苦悩とそれを克服するまでのドラマにすぎないのだ!と閃いた、つもりになる。でもすぐ次の瞬間には、その解釈は決定的に間違っているような気がして不安になるのだ。


 つまり、この映画は「終わらない」。結論などないとか、解釈は観た人に委ねられるとはよく言うが、これはそれらとも少し違って、頭の中でどんどん姿を変えていってしまう感じなのだ。私の意志など無視して、映画が勝手に流動してゆく。ネットで調べればこの映画のどの部分がノンフィクションで創作かなどすぐに分かってしまうのだが、試しにそれも疑ってみようとすると容易にできてしまう。この作品について一つ流動的でないことは、私の頭はチャーリー・カウフマンには勝てないということだ。