Sunshine Cleaning

minii2009-09-30


クリスティン・ジェフス監督『サンシャイン・クリーニング


 平日の朝イチの回にしてはお客さん入ってたなあ。主婦や老夫婦ばかりじゃないし、こういう小規模作品に興味を持っている人は地方にもたくさんいるぞ!映画の未来はそこまで暗くないぞ!と思った。多少なりとも、この作品のポジティヴィティが伝染してそう思ったのかもしれないけど。

 
 『リトル・ミス・サンシャイン』は大好きな映画。そのプロデューサーチームが製作したとあって本作も文句なしに良かった。「インディーズ映画」というジャンルが使い物にならなくなって、ファッションと同様に映画も流行なんてあって無いようなものとなってしまった今、この「サンシャイン・シリーズ」をもはや一つのジャンルにしちゃってもいいんじゃないか?と思うぐらい重要な作品だと私は思います。

 偏見と誇張を交えて言えば、昔はアメリカ映画と言ったら舞台はニューヨークばっかりで、アメリカン・ドリームを主題にしたものが多かった。西洋文化に対してコンプレックスを抱く日本人はそれを観てアメリカに憧れていたわけだけど、本作はそれとは違って、まず舞台が地方都市アルバカーキ。シングルマザーで不倫中の姉と無気力なフリーターの妹、その父も変な商売に手を出して失敗したりとなんだか浮ついている家族。摩天楼もアメリカン・ドリームも全然出てこない。たぶん設定が埼玉でもイケる。それはつまり普遍性があるってことです。

 しかし、まとまったお金が必要になった姉が始めるのが犯罪現場の清掃事業というあたり、けっこう目新しいし、美人姉妹がそれをやるっていうギャップが視覚的にも面白いし、単なる普遍的な家族ドラマに陥らないところがいい。そして逆に、その美人×スプラッタの要素に頼りすぎないところはもっといいのです。

 彼らはそれぞれ、自分の人生の中で目を背けてきたことがある。それを見ないまま高校の同級生に会って見返してやろうなんて考えても、結果は・・・。この物語は、変わった商売を始めて成功をつかむサクセス・ストーリーではありません。いろいろ頑張ってるのに全然ツイてなくて、結局ほんの一歩、いや半歩しか先に進めないもどかしさでいっぱいです。なのに苛立ちなどちっとも感じず、観る者はこれまでになく前向きな気持ちになれるはずです。登場人物たちは、悪いものは断ち切り、執着は想い出へと変換し、自分を保護してくれる人から自立し、それぞれが新しい旅立ちを迎えます。いい年したおじいちゃんまでもがです。彼らはこれから先、もっと苦労するかもしれません。でもそれでもいいんじゃない?と思えてしまいます。こういう「家族」の在り方も、大いにアリだと思います。PG-12だけどとっても爽やかな映画です。