ゼラチンシルバーLOVE


繰上和美監督『ゼラチンシルバーLOVE』

 写真家が撮る映画だから映像は綺麗なんだろうなと思って観てみたけど、ストーリーも意外とオーソドックスなサスペンスで観やすかったと思う。
 ただ、一つどうしても引っかかったのが台詞の平坦さというか陳腐さ*1というかで、映像がカッコ良ければその分なおさら「聞いているのがハズカシイ」という「J-POP的」感覚に襲撃されて集中力を削がれてしまった。もしかしたら『リミッツ・オブ・コントロール』の余韻が続いているからかもしれないが、言葉がもっと詩的だったら良かったのになあと思う。

 この作品はとにかく宮沢りえが最高で、すべてのカットにおいて彼女が美しく魅力的だ。テレビ化している日本映画界において、こういうテレビ的カワイさとは異なる女性の美しさをとことん見せてくれる作品は珍しいのではないだろうか。私はこの作品を映画として特別面白い作品ではないと思うけど、「見る」という行為の対象としてはいいものだと思う。 劇中の不思議なダンス?体操?みたいなの、どうやら振付はバレエダンサーの首藤康之氏のようでその辺もちょっとした見どころかと。

*1:【加筆】予定調和的というか、優等生すぎるように私は感じた。あまりにも在るべきところに在るべき言葉が据えられているような。永瀬正敏演じるカメラマンに迫る女子高生がカラオケで歌う曲が椎名林檎の『罪と罰』だっていうところもちょっと「出来すぎ」感が否めない。ただ、テレビ的ミュージックビデオ的「出来てなさすぎ」な映画が多い中でこういう作品が求められているのだとすれば、それは納得せざるをえない。