The Usual Suspects

ブライアン・シンガー監督『ユージュアル・サスペクツ

ユージュアル・サスペクツ [DVD]

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 これすっごい面白かった!これを観ずしてサスペンス映画を語るなかれ、ですな。14年前の作品なのに古い感じは一切しない(ベニチオ・デル・トロが若い!ということを除いては)し、オチが分かって観ても十分面白いと思う。ていうか観終わってすぐもう一回観たくなるこの感じ不思議。
 
 息もつかせぬ展開で106分駆け抜けるのだけど、いわゆるアクションシーンやCGによる映像効果などはほとんど無く、そして観る者は手に汗握ることなく、異様なほど冷静に観ることができる。良い意味で、どの登場人物も感情移入されることを拒んでいるような気がする。だいたい観ていてそんな暇ないし。そうだ、私たちは、あの面通しのガラスを通して彼らの物語を観るのである。誰かが嘘をついていることは知っている。しかし彼ら(俳優の彼らと登場人物としての彼らの両方)の演技も脚本も巧妙でなかなか手強い。犯人に目星をつけても、覆されれば自信を失ってしまう。
 
 食べ物と同じように、映画にもさまざまな添加物が使われています。コンピューターグラフィックスや過剰なアクション、グロテスクな映像や大きな音で「ワッ!」と怖がらせようとする幼稚な手法などなど・・・。それらはどれも必要で、私たちの生活を豊かにしてくれるけれど、いつもそればかりじゃ内臓が疲れるもの。素晴らしい脚本と素晴らしい芝居によってつくられた本作には余計な添加物は入っていない。だからいつでも何度でも食べられる、普遍的に面白い映画なのです。ケビン・スペイシー最高。

 あと、原題をそのままカタカナにしただけの邦題って好きじゃないのだけど、これは別ですね。なんてったって響きがカッコイイからさ。