The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン
- 発売日: 2007/07/27
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (20件) を見る
ステファン・エリオット監督『プリシラ』
シャーリーンという一発屋(?)の「愛はかげろうのように」がこんなにいい歌だと感じるとは思わなかった。日々に鬱屈したら旅に出るに限る。それが無理ならロードムーヴィーを観るに限る。なぜなら人生は旅だから。
この作品は正統のロードムーヴィーに他ならず、ゲイ映画と位置付けるならば注意が必要だ。これはノーテンキでハッピーなミュージカルじゃないし、迫害される被差別者の苦悩を描いた社会派ドラマでもないからだ。そして、だけど、その両方の要素もまた含んでいるからだ。アカデミー衣装デザイン賞を受賞しただけあって、煌びやかで美しい衣装とオーストラリアの荒涼とした砂漠との対比が映像としても素晴らしいし、なんかずっと歌ってばっかり(口パクだけど)だし、かと思えば田舎の教養のない野郎たちに暴言を浴びせられ殴られ・・・しかしそこで「彼女たち」は学び、ソリの合わなかった者同士が心を近づけたりして旅=人生は進行してゆくわけで、やはりちょっとパーティーライクでなぜかハードボイルドなロードムーヴィーなのである。
主人公たちがなぜドラァグクイーンである必要があるか。作者の真意はさておき、私の感想としては、世代もバックグラウンドも違う3人が一緒に旅をすることで、お互いの人生に与える変化は大きく、それぞれが心を開く瞬間がより劇的になるのだと思う。そして、その3人に一緒に旅をさせるには、旅に出る大きな動機が必要で、ドラァグクイーンという「特殊な」人たちならば、それが揃うのではないだろうか。
つまりこの作品は、性転換者を描くためのものではなく、あくまで人間の心が動く瞬間を表現するための「手段」として女装者が存在するのではないか。
だから悩みは一緒なんて言わないけど、彼女たちが感じているブルーズは誰にでも普遍的にあるし、それを乗り越えて一皮むける様というのはどうしたって爽快なもので、オマケに奇抜な衣装やパフォーマンスも楽しめるこの作品はかなり盛りだくさんのいい映画だと思う。ちなみに主演は『マトリックス』シリーズのエージェント・スミスでお馴染み、ヒューゴ・ウィーヴィング。もちろん女装してABBAで踊ったりします。個人的にはテレンス・スタンプ演じるベルナデットにシビレた。男も女も超越したカッコイイ人。アボリジニとのジャンボリーのシーンが結構胸に沁みた。