The Curious Case of Benjamin Button

minii2009-03-16


 文系の学士を持っていてフィッツジェラルドの『華麗なるギャツビー』を読んだことがない、というとおそらく非難と嘲笑を、そしておそらく同じくらいの共感を得るのではないかと思う。私は読み進められなくて結局ギャツビーの授業は切っちゃった口。いずれにせよそのフィッツジェラルドが、こんなファンタジーを書いていたのだということが私には驚きで、フィッツジェラルド読まなきゃ!と思わされた。つまり、この映画けっこう良かった。
 ブラピが20代から80代まで自分で演じる、というその一点が私にとっての見どころで、それ以外にはせいぜいケイト・ブランシェットのバレエぐらいだろうと予想していた。その意味ではハードルを低く設けていたから結果的に良い感想を持ったともいえるけれど、3時間近い長尺なのに特に飽きなかったし、かといって特別テンポがいいわけでも過剰に劇的なわけでもなく、ひとつひとつのエピソードはどちらかといえば地味なのがかえって良かったような気がします。
 この作品の映画化は何度も企画されては技術が伴わず不可能とされてきたらしいけれど、たしかに今がその時であったのだろうなあ。常々テクノロジーを追求するハリウッド映画界に嫌悪を抱いている私ですが、この作品においてはそういうネガティヴな感想は一切持ちませんでした。メイクも本当にすごいし。どれぐらいコンピューター処理が入ってるのだろう。メイクだけであんなに若返るならやってみたいものですよ。
 まず、80歳で生まれて若返ってゆくという設定の着想がすべてだから、その人生のディテールは『フォレスト・ガンプ』ほど冒険に満ちてはいないし、ベンジャミンとデイジーの恋も『エターナル・サンシャイン』ほどファンタジックじゃない。ハイテクな技術を使っていながら嫌味に見えない。そういうバランスが良く取れている品のある映画だと思いました。テーマは生と死と愛とか、シンプルかつ普遍的なものだし。長いから繰り返し観るものではないと思うけど。

 ケイト・ブランシェットのダンサー姿の麗しさを瞼に焼きつけたまま、映画館が入っているショッピングセンターをうろついていると、美人なのになんだか物足りなく見える女性が目について、どこがおかしいのか考えてみたら、それは「姿勢」でした。猫背を直せば3割増で美人に見えるかもしれません、まじで。