My Blueberry Nights

minii2009-02-06


ウォン・カーウァイ監督『マイ・ブルーベリー・ナイツ

 これ劇場で観たのだけど、ここには感想書かなかったんだなあ・・・たぶん、思ったより良かったのでなんだか悔しかったのと、何も語る必要などないような気がしたからだと思う。

 数日前に、ラジオでノラ・ジョーンズの“The Story”が流れて、この映画をもう一度観たいと思った。ただそれだけの理由だったはずなのに、観始めたらそこにはいくつも、私が誰かに言って欲しかった/言ってやりたかったセリフが散りばめられていることに気づいて、私の頭はどこかでそれを知っていてこのタイミングでこの映画を見せたのかもしれないと思った。この映画には様々な・・・破れる恋、実る恋、大事な人との死別、終わりと始まり・・・人生における劇的な要素が織り込まれているので、登場人物の誰かに感情移入するかしないかに関わらず、何度も観てもその度に心動かされるのです。私はどんな映画が好きかと言われれば「普遍性のあるもの」と答えますが、この作品もそれに当てはまる一つです。

 雑誌で誰かが対談をしていて、この作品でジュード・ロウが演じたジェレミーという役がトニー・レオンに見えて仕方なかったと仰っていました。確かに、まるで『恋する惑星』のトニー・レオンのようです。加えてデヴィッド・ストラザラーンが演じたアーニーという役も、どこか『ブエノスアイレス』のトニーに似た哀しさを湛えているように思われます。しかし、アジアを舞台にセルフリメイクするべきだ、みたいな意見はどうかなー?というかしない方が私は全然いいと思うんですが、なぜならアーニーはトニー・レオンである以上に『パリ・テキサス』のトラヴィスで、これは純然たるロードムーヴィーであり、ロードムーヴィーはやはり、西部開拓の記憶がDNAに刻まれているアメリカ大陸でつくられるのがしっくり来ると思うからです。
 
 日本では甘いラブストーリーとして宣伝されましたが、実はエリザベス(ノラ・ジョーンズ)とジェレミーは物語の語り部にすぎず、アーニーとスー・リン、そしてレスリーこそが主人公の、実に切ない別れの物語なのではないかと思います。そしてエリザベスとジェレミーの関係がハッピーエンドになることで、映画全体が絶妙なバランスを保っているように思うのです。
 なので、どうせ恋愛映画だろ?と食わず嫌いされている方は是非ご覧になることをおすすめ致します。


 で、写真は今日の私の夕飯。この映画観るとさ、ブルーベリー・パイよりもステーキとポテトが食べたくなるんだよ。映像としてはひとつも出てこないのだけど。しょうがないから肉買ってきて自宅で焼いた。