いつかソウル・トレインに乗る日まで

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高橋源一郎著『いつかソウル・トレインに乗る日まで』

 昨日買って一気に半分ほど読み(読むのが遅い私にしては速いペース)、すごく、いい、これ!と思ったのでメモ。
 タイトルの「ソウル」はsoulのことだと勝手に思っていたのだけど、最初のページですぐにseoulのことだと分かり、戸籍に「【帰化の際の国籍】大韓民国」と記載されている私は、悲しいような恥ずかしいような、ざわざわする感情を抱えることを余儀なくされ、しかも「著者初の、そして最後の超純愛小説」という謳い文句の通り、主人公ケンジの過去の恋愛の思い出が蘇る度、彼に、そして美しい女たちに感情移入して、この世が悲しくて美しい世界だと知る。
 これがただの「恋愛小説」なら私はもう読むのをやめる。でも違うのです。恥ずかしながらこの著者の作品をきちんと読むのはこれが初めてなので、他の作品との比較はできませんが、高橋氏は、生意気な言い方を許されるのならば、人間の本質を知っている人だと思います。そして何より、小説を知っている人だと思います。私はこれを読んで、自分でも何か一本ぐらい書けるのではないか、などと甘いことを考えていたことを痛切に恥じています。
 主人公のケンジにしても、著者の高橋源一郎にしても、私はこんな人間になってみたいと思います。すっごい浮気症なんだろうけど(笑)
 つまり私は、この小説にすっかり恋してしまっているのです。