Atomik Circus

エイリアンvsヴァネッサ・パラディ [DVD]

エイリアンvsヴァネッサ・パラディ [DVD]

 『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』というフザケきった邦題にハートを鷲掴みにされ、観たい観たいと思っていた公開時も今は昔、最近まですっかり忘れていてようやく鑑賞。
 言うまでもなく内容は皆無。終盤をもう少し頑張ってつくればSFパニックムービーとして名を残したかもしれないが、結果としてヴァネッサ・パラディのプロモーションビデオになっている。もしかしてそれが製作の意図なのか?だったらまんまとハメられた。とにかくヴァネッサが可愛い。楽曲もレニー・クラヴィッツが手がけたアルバムに似た雰囲気(というか彼女の作品はそれしか知らないのだけど)で、バランスが良いんじゃないだろうか。彼女にエレキギター背負わせたりオフロードバイクに乗せたり水に潜らせたり、という場面には、製作者たちの男のロマン的なものを感じずにはいられないけど、それも鬱陶しいほどじゃない。だって可愛いんだからそんな姿を見たいよね。
 しかしこの映画を楽しく観続けられたのは、彼女の魅力だけによるものでもないと思う。日本人には解せないようなブラックユーモアや、ミュージカルでもないのに突然歌い出し踊りだす場面が唐突に登場する様は、'60年代にしばしばつくられた低予算お洒落B級映画を彷彿させるからだ。なんとなく惹きつけられてしまうディテールが連続しているうちに、最後まで観てしまう。
 この映画の原題は“Atomik Circus, le retour de James Bataille”というが、タイトル通りに行けば主人公であるはずのジェイムズ・バタイユを演じたのは、ガイ・リッチー監督作品で印象を残したジェイソン・フレミングであるが、個人的には彼がフランス語が堪能なのに驚いた。この人フランス人だったの!?と一瞬思ってしまうぐらい(実際はスコットランド系のイギリス人)。最後に砂の惑星を彷徨うときなどは、ちょっとジャン=ポール・ベルモンドに似て見えたりもしたし。結構味わい深い表情をするし、もっと見たい俳優の一人。
 とにかく邦題はインパクトのみで的外れなのでアテにせず、ヴァネッサ・パラディのPVか、ブラックなB級コメディ映画として観ると、意外とバカにできない作品かもしれません。