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ヴィム・ヴェンダース PRESENTS レディオ・オン [DVD]

ヴィム・ヴェンダース PRESENTS レディオ・オン [DVD]

 デヴィッド・ボウイのヒーローズは言わずもがなの大名曲で、それをバックに映し出される暗いモノクロの映像も良いし、部屋の壁に貼られたメモの言葉もなんだか意味ありげでいいと思うが、それらが合わさるとどういうわけが陳腐で空々しく感じられ、そのような本作の冒頭の印象はエンドロールまで拭われることがなかった。
 '70年代のポップソングを多用したり、スティングに弾き語りをさせたりという演出が、表層的なカッコよさばかりを強調して、人物の内面を見えにくくしているように私は感じた。物語自体はロードムーヴィーの基本に則っているように思われるので、脚本は悪くないのかもしれない。それを「カッコよく」描こうとした監督の力量が足りなかったのだろうか。製作にヴィム・ヴェンダースの名があるのもそれっぽいといえばそうだが、個人的にはもっと心に沁みるものが欲しかったように思う。映像として、もう一度観たら味わい深いかもしれないという期待を残させる点では、それなりに良いと思う。