うっかり寝てしまった黄昏時。見た夢は、今日見た映画の影響がもろに感じられたはずなのに、覚えているのは全く関係のない最後の部分だけ。その前が楽しそうだったのにな。


 初めて入った蕎麦屋は昔からある、どっしりとした木の内装がいい感じで、テーブルも大木を割ってそのまま寝かせたような、自然の曲線がなかなかお洒落な店だった。味も良いとみえ、店内は食事時を過ぎても客が絶えない。私は迷わず天ざる蕎麦を注文して、夢ならでは、ものの3秒で完食した。食べ終わってから周りを見回すと、私以外の客全員が蕎麦ではなく饂飩を食べていた。蕎麦屋なのに野暮だなあ、と思ったけれどよく見ると、その饂飩が実に旨そうである。しかもボリュームが半端ではない。それこそ盥のような、直径が50センチはありそうな、これまた木を輪切りにして中をくりぬいたワイルドかつお洒落な器に、出汁とつるつるしたうどんがなみなみとした上、刻み海苔と世にもさくさくな揚げ玉がどっさり載っており、その世界の私は3秒で天ざるを完食したぐらいなので、その饂飩は非常に魅力的に映った。あと胡麻だれで食べる饂飩も旨そうだった。
 人様の食事を無礼にも凝視していると、店員の小太りな女が「アマミスノミマス?」と話しかけてきた。あまみす、という気の抜けた単語はおそらく「あまみず」であるべきだということが、そして同時に感じで「甘水」*1だろうということが何故か夢の中の私は分かって、でもそれが一体なんであるかは分からなかったけれど、兎に角「はい。」と言って頷いてみた。すると小太りの店員は持っていた500ミリペットボトルから私のグラスに何か、どろどろとした薄茶色い液体を注ぎ、「アァ、いれすぎちゃった。へらっ。」と笑って私のグラスからそれを注ぎすぎた分だけ、飲んだ。変な女、と思いつつ、見知らぬ人が口をつけたグラスから、その「あまみす」を飲んだらそれは、パピコを溶かして味を薄くしたような独特な、というか不味い飲み物で、饂飩の件と併せて誠に残念だった・・・・


という夢だった。
 夕飯の時刻になったので、寝床から起き上がり、階下に降りる前にトイレに入った時、寝ぼけた頭に
 「きょうのごはんは中華丼。」
と浮かんだ。そして台所に降りて見たものは、大皿に盛られた中華丼のあんかけであった。

*1:たぶん、「雨水」が潜在意識にあったものと思われる。眠りに落ちる前に、窓に当たる雨音を聞いたので。