町田康『告白』

使うカテゴリーをある程度確定したいのと、自己反省のつもりでまたもやmixiに書いたレビューを。
映画のレビューよりも本の方が短くまとめられる傾向にあることが分かった。
何事もスマートにしたいものです。

告白

告白

 あまりに生真面目で律儀で不器用であるがゆえに、気狂いのやくざ者と思われてしまう男。町田康が多くの作品で主人公に据えるこういった人物に、私は共感を抱いてきた。それは読んでいて爽快であった。
 しかしこの作品はちっとも爽快でない。676頁に集約された一人の男の人生。それは生と死そのものの真実。それは私の人生でもある。だから読むにつれ辛かった。生きるということはかくも苦しく、寂しいものなのか。
 彼の紡ぐ文章は一見エキセントリックだが、その実は普遍性に満ち溢れている。彼の鋭利な言葉は読む者の胸を貫き、尋常でない痛みを惹き起こすが、その傷による血液の温かさは、同時に安心をもたらすようにも思われる。
 生と死、愛と憎、奇矯と普遍、嘘と真。それら全てを読みつくして、もう涙しか出ない。