JUNO

ジェイソン・ライトマン監督『ジュノ』

 まったく最高だよジュノって娘は!
 この映画があらゆる所(アカデミー賞とそれを毛嫌いする所の両方)で高く評価されていたのは知っていたけれど、食わず嫌い的に今まで観られなかった。だって16歳の少女が予定外の妊娠をして養子に出すなんて話、少なくとも日本映画なら苦々しくて痛々しくて切なくて説教臭くて無理矢理泣かされるに決まってると思うじゃない。そしてあたしはそんなの御免だ。
 しかし実際にはこの作品は、私のそんな乏しい想像力では到底及ぶことのできない素晴らしい物語を持っていた。もしかしたらちょっと悲しい結末かもしれないのに、ちっともそんな風に感じなかった。爽快だった。なんだか嬉しかった。
 ストゥージズとパティ・スミスとランナウェイズが好きなジュノ。ダリオ・アルジェントが好きなジュノ。フェンダーよりギブソンが好きなジュノ。彼女は本当の事しか言わないし、本当の事から逃げようとしない。ヘナチョコなのは野郎の方で、男というのは万国共通いつでもどこでも何歳でも、父親にならない限り弱っちくてちっとも頼りにならないのだと思い知った。(だから男性諸賢もこの作品を観て思い知るといいと思います。妊娠がテーマだけど、オトコノコたちが貧血起こしちゃうようなシーンは無いからご安心を。)
 映像の組み立て方もポップでテンポよく、“文法的”にも良い映画だと思う。妊娠中のムダな描写を徹底的に省いたところも尚スバラシイ! そしてジュノだけでなく彼女の父親と継母も何気にパンクでハートフルでクール。「親」とは「大人」とはこういう人たちを言うのだろうなあと思う。
 たった16歳のジュノは言う。自分より年上の“大人の”男に、「ソニック・ユースを買った。でもあんなのただの雑音よ。」
 私もそう言えるカッコイイ女になりたい。そう強く願って映画が終わった後、ターンテーブルにストゥージズをのせた。