戦略は皆無

 今日好きな人を明日も好きだとは限らないのと同じく、今日が爽快でも明日は鬱々とするのかもしれないが、散財によって気が晴れるというのは私も女の端くれだということの証明か。

 昨日アイライナーを2色買ったので、今日はそれらで目を囲んで出勤したところ、2メートルほど離れたところから姉が「なんか目元がかわいい。」と言ったので姉妹というのは凄いものだなと思った。ほとんどふさがっている穴に無理やりピアスをねじ込む作業は毎日痛いが、仕事を終えてから東京へ向かう自分を奮い立たせるには必要な作業です。
 失恋をしたら髪を切るというのが日本の風習だけど、昨年末に髪を伸ばすと宣言してしまったためそうもゆかず、今日は切らずにパーマだけかけてきました。少しは扱いやすくなって挫折せずに伸ばせそう。巻いてもらっている間に、ことの次第を一言二言で伝えると美容師の彼女、「そういう男の子は後々バチが当たると思うよ。」というのでそれいいなあと思った。私には「復讐するなら手伝うよ。」と言ってくれた友人がおり、それもとても嬉しいのだけども当の本人が彼ではなく自分をすっかり責めている現状、彼女の活躍は不要。しかし「バチが当たる」ってのはなんか、平和的だし、私の意図と無関係だし、おまけに表現としても古風だし完璧です。
 美容室を出ると外気は凍えそうに寒かったので(あまり食べずに煙草ばかり吸って近頃体温が低いのです)、TOPSHOPでアウター2着とカーディガン1枚を買って、帽子屋でツバつきのニット帽を買って、ハイボールが飲みたくなったので奮発してジャイル内のバーでハイボールとオムレツを頼み、ブーツのフリンジ揺らしながらの帰路。

 星明かりに照らされたたくさんの路駐を見て、いまこの瞬間に絶頂に達したカップルは何組いる?というのは『アメリ』に出てくるエピソードだったなあと思い出し、しかし不思議と寂しい気持ちにならずに済んでいる私は、そりゃあ孤独だけどもちっとも惨めではないのだなあと安心したのです。