She's So Lovely

さあ、酔ったところで何を書こうか。

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ニック・カサヴェテス監督『シーズ・ソー・ラヴリー』

 「運命の恋人」というジャンルを設けるとしたら、私の中のトップ3は『エターナル・サンシャイン』『橋の上の娘』そしてこの、『シーズ・ソー・ラヴリー』です。久しぶりに観たけど、この映画ほんと最高だ!

 文無しのダメ夫婦、エディとモーリーン。ある日モーリーンが隣人に暴行されたことを勘付いてキレたエディは精神病院に収容される。10年の月日が経ち、その間に離婚は成立、モーリーンは別の男と再婚、エディとの子を含めて3人の娘をもうけ、平穏で幸福な生活を送っていたが、エディの退院によって・・・
 こうして書くと昼ドラか!ていうかまあ、もう少しマイルドなヴァージョンならばこういうことって普通に起こりうるのだろうなあと思う。不良の彼が好きだったけど堅気の人と結婚しちゃうとかさ。でもこの作品のすごいところは、「え!ここでこうなる!?」という展開をいくつか用意した上、その重々しい箇所をこそとびきりコミカルに演出し、しかし軽薄ではなく、現実に起こりそうでありながらお伽噺のようにみえてしまうような、巧妙なバランス感覚を持って一本の映画にしたところであると思います。インディーズ(この括り大嫌いだけど)映画でありながらキャストは一流だし、映像の構造も素人目で見る限り文法に則った正統派の構成だと思われるし・・・少し過大評価なのかもしれませんが、これは名作になるべき作品であるのに、それ自体が名作と呼ばれることを拒否しているかのように私には見えるのです。そしてそこがやっぱりカッコイイんだよな!
 9歳にして誰よりもしっかりした思考を持つ娘ジーニーと、実父エディの会話の場面など心に沁みるものがありますが、でもなんといってもダンスホールのシーンが印象的です。あんな晩を過ごせたなら、もう死んでもいいって思うのは乙女心。私はロビン・ライト・ペンが演じたこのモーリーンというキャラクターが大好きです。あんなことを言ってしまえる、できちゃえる女性って本当にいないと思う。よく、母親として生きるか女として生きるかの二者択一みたいな言い回しをききますが、そういうの超越しちゃってるもの。ちょっと現実的ではないのかもしれないけど。“Because she's so lovely.”というセリフを「だって夢の女なんだから。」という訳にしたのは巧いなあと思いました。ほんと、そんな言葉にふさわしい女。

 ありそうでなさそうな恋愛映画。ジョン・トラボルタが最高のスパイスで、監督の母上、ジーナ・ローランズが出ているところにも愛を感じます。