War in Peace

 昨年、カンヌ国際映画祭が60周年を記念して上映した短編映画集『それぞれのシネマ』(“Chacun son cinema”/“To Each His Own Cinema”)。35人の監督が「劇場」をテーマに撮ったもので、東京フィルメックスでひっそりと上映された以外に日本での上映があったか知らないけど、まともに観られる機会はあまり無いんじゃないでしょうか。私はyoutubeで地道に探して観てますが、それぞれの尺は本当に短いのだけど、結構グッとくるものがありますね。北野武監督の『素晴らしい休日』は『監督ばんざい!』のDVD特典で観られますが、労働者における劇場というテーマにおいてアキ・カウリスマキ監督の“La Fonderie”と共通していて、やっぱり労働者とか貧者というのは絵になってしまうんだなあ。なんて思ったりもしました。
 そしてこれは、ヴィム・ヴェンダース監督の作品、“War in Peace”です。

 恥ずかしながら知らなかったんですが、ザイールという国はもう無くて、今はコンゴ民主共和国というんだそうです。これはそのコンゴ民主共和国のカバロという地で、『ブラック・ホーク・ダウン』を上映しているところ、という以外の詳細はわかりません。たしか『10ミニッツ・オールダー』の元となった作品だったか、映画を観ている子供たちの顔だけを撮った短編映画を観たことがあるんですけど、それと同様にこの“War in Peace”もまた鑑賞する子供たちの顔を大写しにしています。何かに集中している人間というのはそれぞれ色んな表情や動作があって面白い。だけど共通するのはその目の強さで、今にも生命力が溢れ出しそうな強烈な眼差しが、たった3分という映画の尺を優に越えて観る者の心に焼きつくでしょう。
 上映、といっても映画の中で彼らが見ているのは小さなテレビ。だけど彼らは夢中になって、映し出される戦闘の場面に心を痛めています。映画がただの暇つぶしなら、衣食住で精一杯であろう彼らの心がそれほど動くでしょうか。
 映画ってやっぱり、ほんとうはすごくパワーを持っているんだ。