光と水。それらからすべては始まった。

 

 モネの睡蓮のような淡く複雑な輝きは見えないのだけれど、その水生植物が視覚から心を潤すということは一目瞭然で、風に揺れる水面の襞は絵画の通りに楕円だし、遠くに行くほどどんどん平べったくなってゆくそれは要するに、光、光、光の粒。
 日が照っても涼しくて、また、陰っても明るくて。
 全く不思議な場所だと思ったけれども、自然界(nature)においてはそれが普通(natural)のことなんだろう。
 私が実際の水面を見て、「絵画への相似」を見出した逆転。「自然」を「不思議」に感じる逆転。あるいはまたその逆転。そして水面に映る木々や空の逆転した像。様々な逆転が共存していて心地よい。
 心地よいのに、ここはなんだか寂れている。住宅地の奥の、或る池で、彼は釣竿振って、私はペンを動かして。